リニアの南アルプス破壊

[リニア新幹線]

 国交省リニア中央新幹線の着工を許可するという。目を開いて見てほしい。東京名古屋間、わずか40分の時間短縮のために、何がおこなわれるか?

 JR東海南アルプスの核心部、赤石山脈の山腹を貫き、総延長52キロのトンネルを掘る計画だ。トンネルを掘るなら、自然も景観も変わらないと思うかもしれないが、とんでもない。このトンネル工事により、長野県内だけでも950万立方米の掘削土が発生する。それをどうするのか、JR東海は明らかにしていない。非公式に発表したところによれば、静岡県大井川上流では、南アルプス山中、それも標高2千メートル地帯に遺棄するという。

 950万立方米とは、東北三県、岩手、宮城、福島の海岸線370キロに高さ5米、幅5米の防潮堤が築ける土量である。その半分でも山や谷に遺棄されれば、たとえコンクリートで塗り固めるにせよ、南アルプスの景観や環境は一変するだろう。

 掘削土の処理だけではない。トンネル工事で地下水の流れも変わる。生態系の分布も変わる。異常気象による出水や土砂崩れにどう対処するかという問題もある。こうした問題に対し、事前に具体的対策が示されることは、国の環境基本法が求めるところでもある。それがないまま、国交省は着工許可するつもりか? 

 国立公園・日本アルプスという国民の憩いの場が、官と企業の馴れ合いで、破壊されようとしている。
(この稿おわり)